2008-11-09 22:26:29
Ø / Oleva [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Ø / Oleva (Sähkö Recordings) ('08)
Pan SonicのMika Vainioによる変名"Ø"の2008年最新作。Pan Sonicや彼のソロ作品を数多くリリースしてきた地元フィンランドのSähkö Recordingsからのリリース。Ø名義での作品は、常に攻めの態勢を崩さず、その攻撃性をミニマルというストイックな手法により昇華させるPan Sonicとはまた趣の異なるものであり、より多種多様のスタイルを取り込んだ彼なりのエレクトロニック・ミュージックとなっている。シネマティックなオープニングのtr.1から一転、太いキックが躍動するフロア寄りのtr.2に雪崩れ込む瞬間は非常にクール。また、tr.3はなんとあのPink Floydのカバーである。彼等の2枚目の作品『A Saucerful of Secrets (邦題:神秘)』に収録の"Set the Controls for the Heart of the Sun (邦題:太陽讃歌)"は妖しいメロディーラインと民族的なリズムが印象的なサイケな曲だが、それを大胆アレンジし、妙にオリエンタルな雰囲気を醸し出す曲に仕上がっている。ダウナーなtr.5、ブルータルなリズムが執拗に繰り返されるtr.6、tr.2の別アレンジのtr.7を経て、作品も後半に差し掛かると徐々にリズムレスのアンビエントな作風へとシフトしていく。ギター?による大胆なコードが時空を捻じ曲げるtr.10、女性の囁きに始まり、焦燥感を煽る逆回転音とともに奈落の底へと落ちていくラストナンバーのtr.12。とにかく作品の隅々までに彼の才能が溢れ出ている。リズムに関してはズバ抜けた才能を遺憾無く発揮しつつも、随所に現れるメロディーはジャケ写の様に無国籍な雰囲気でありながら、決してクドくなることなく作品の統一感の手助けとなっている。とにかく素晴らしい。個人的には2008年暫定No.1の作品。
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2008-10-26 21:54:08
Aidan Baker & Tim Hecker / Fantasma Parastasie [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Aidan Baker & Tim Hecker / Fantasma Parastasie (Alien8 Recordings) ('08)
「カナダ エクスペリメンタル〜アンビエント〜ノイズ 一番勝負」
Aidan BakerとTim Hecker、カナダ出身同士のサウンド・アーティストによるコラボレートが実現した。ドゥーム〜ドローン・プロジェクトのNadjaをはじめとし、ソロも含め様々な形態で世界中のレーベルから数多くの作品を産み続け、超がつくほど精力的な活動をしているAidan Bakerと、「Fennesz以降」のアンビエント〜ノイズ・シーンを牽引し、Mille Plateauxやkranky等のレーベルに傑作を残しているTim Hecker。両者ともに、自身のサウンドを表現する道具としてギターを使用することが多く、また。Tim Heckerに至っては、近年ISISやJesu等のアトモスフェリック・スラッジ系(とでもいうのか?)のバンドへの接近もあってか、今回の共演はごく自然な流れで実現したと思われる。
そんな両者の共通点がサウンドにも反映されている。全体的にはアートワークや楽曲タイトルにもあるようなゴシックな匂いが漂うが、ディストーション全開のギターと野太いデジタル・ノイズの#1〜#10や、クリーントーン・ギターとレイヤード・アンビエンスが織り成す流麗な#11〜#21、ギターのアルペジオとハーモニクスのディレイが美しい#22〜#32、スラッジ風ギターの#33〜#43、本作中最もノイジーで重く、一寸先も見えない濃霧ノイズの#44〜#54、透通るシンゼと背後のホワイトノイズによる#55〜#65、闇の中で沈むように繰り返されるレクイエムのような#66と、ギターとデジタル・ノイズを基調にしつつも、バラエティーに富んだ楽曲が並んでいる。なお、本作はタイトルがついている大きな7つの楽曲から構成されているが、楽曲間はシームレスであり、かつ各楽曲は細かくセパレートされ、全66トラックという異質な形態を取っている。
また、余談だが、現在Tim Heckerのオフィシャル・ウェブ・サイトでは「FULL LENGTH ON KRANKY EARLY 2009」とアナウンスされており、2006年の『Harmony in Ultraviolet』 に続くフルレングス・アルバム(タイトルは『An Imaginary Country』?)の発表が予定されている。こちらも非常に楽しみだ。
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2008-10-13 19:35:42
Oren Ambarchi / A Final Kiss on Poisoned Cheeks [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Oren Ambarchi / A Final Kiss on Poisoned Cheeks (Table Of The Elements) ('08)
アメリカのTable Of The Elementsの設立15周年記念としてリリースされている12inchシリーズにOren Ambarchiが登場です。雄大なギター・ドローンを下敷きに、スペーシーな音色の電子音が忙しなく運動を繰り返し、やがてフィードバックが重なり一つのピークを迎えた後、ドローンの残像とお馴染みの瞑想的なベルの音色が万物を道連れにするように消え入る、約20分間の一大抒情詩。ギターに焦点を当てたこのシリーズの中で、Orenは独自の世界観を打ち出しています。この曲をシリーズの一環としてのリリースに留めておくのがもったいないくらい、ハイ・クォリティーな出来となっています。なお、本シリーズはクリア・ヴァイナル仕様になっており、トラックの収録は片面のみで、もう片面には美麗なイラスト・エッチング加工が施されています。それを知らずにエッチング面をレコード針でなぞり、繰り返されるプチプチしたノイズに、「ん?、超ミニマルな音だなぁ」なんて思ってしまったことは内緒です。
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2008-09-07 21:45:58
Oren Ambarchi / Destinationless Desire [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Oren Ambarchi / Destinationless Desire (Touch) ('08)
今春から立ち上がり、これまでにFennesz、Mika Vainio等や、最新作ではJim O'rourkeがリリースしているTouchの7inchシリーズ。今回はその5作目にあたるOren Ambarchiの作品を紹介。本作は'05〜'07年の間にレコーディングされたもので、小品ながら丹精込められた美しい作品となっている。Aサイドは前半、後半でサウンドが二つに分かれており、前半は中〜低音のループがどこか牧歌的な雰囲気を醸し出しているが、後半は一転してパイプオルガンの様に伸びやかで透きとおった高音が僅かにねじれながら消え入っていくというもの。Bサイドはヴォーカルをフィーチャーしたトラックの回転数を落としたものに、様々なフィールド・レコーディングスを織り込んだもので、ラストのベルが聴き手を彼岸へと誘うように瞑想的に響き渡る。(それにしてもTouchのアートワークは毎回綺麗なので、つい見入ってしまいますね。)
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本作とほぼ同時期にもう一枚アナログ限定で新作(近日レヴュー予定)をリリースしている彼ですが、なんと来日公演の情報が入ってきました。
◆ YOKOHAMA TORIENNALE 2008 〜 エクスペリメンタル・サウンド・プログラム #04
・ 日時: 2008年9月21日(日) 19時
・ 出演: POP(Zbigniew Karkowski & Peter Rehberg)
Oren Ambarchi + Jim O'rourke + Stephen O'malley TRIO
(※ Coordinator: Oren Ambarchi)
これは凄いです。
KarkowskiとRehbergの幻のユニットPOPといい、Ambarchi + O'malleyのSunnO)))組にO'rourkeを加えた最強トリオといい、もう超ヨダレものです。これを見逃したら死んでも死に切れません。このほかにも今年の横浜トリエンナーレでは「エクスペリメンタル・サウンド・プログラム」と題されたイベントでMerzbow等、興味深いミュージシャンが出演するようです。
2008-07-13 21:53:11
Stars of The Lid / And Their Refinement of The Decline [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Stars of The Lid / And Their Refinement of The Decline (kranky) ('07)
レーベルkrankyにおいてLabradfordと双璧を成すテキサスのAdam Wiltzie、Brian McBrideによるベテラン・デュオ=Stars of The Lidの2007年発表の最新作。01年発表の前作"The Tired Sounds of Stars of The Lid"から6年の時を経て放たれたこの作品は、前作に引き続き二枚組の大作、そして"kranky100"のカタログナンバーを背負う記念碑的なものとなった。本作においても彼らの音楽仲間の協力により、弦(チェロ、ハープ等)・管(ホルン、トランペット等)楽器をはじめとするクラシカルな素材で奏でられるミニマルなアンビエンスを堪能することができるが、傑作であった前作より若干音色が明るめになっており、ところどころに感涙もののメロディーラインが現れるのが特徴となっている。音の残響が極限まで薄く引き延ばされ、透明度が増し輪郭が消失した至福のアンビエント〜ドローン・サウンドは明るすぎず暗すぎず、曲のテンションがある一定の振れ幅でゆらゆらと上下し、晴れそうで晴れない霧の中をゆっくりと進んでいく様な、そんな瞑想的な雰囲気を漂わせる。また、この手の音楽にありがちな曲の匿名化とは逆に、彼らは毎度ながらほとんどの曲に「ちゃんと」名前をつけている。彼らの音楽を聴きながらこの曲名から何を想像するもしないも聴き手次第なのだが、何か壮大な物語がそこにあるのではないか、と感じてしまう(特に意味は無いのかもしれないが)。
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2008-06-08 20:44:11
Burning Star Core / Challenger [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Burning Star Core / Challenger (Hospital Productions) ('08)
近頃、密かな盛り上がりを見せているアメリカはオハイオ在住のC. Spencer Yehによるソロ・プロジェクトBurning Star Coreの新作。Hospital Productionsからのリリース。時にはサイケデリックなノイズ、ドローンの使い手として、時には新鋭のヴァイオリニストとして、ソロやコラボ等の形態で次々と作品を連発している彼が放つ新作は雄大ともいうべきスペーシーでシンフォニックなメロディーで幕を開ける。続く#2も限界まで振り切ったディストーション・ギター?による重厚なノイズの嵐といった風で、散漫になりがちなジャンクな音をギュっと濃縮させて放つような"楽曲的"な仕上がりになっている。また、#4は人の声によるドローンにB durのピアノの響きが重なり、さらに荒れ狂うノイズが流入するという離れ業を披露している。作品は後半に入るとスケールの大きいアンビエントな趣にシフトしていき、ラストは神秘的なメロディーと工場内のような音(電動のトルクレンチでボルト締めするような音)が混在となり消えていくように終わりを迎える。メロディーとジャンクなノイズが融合するでも乖離するでもなく、微妙な距離感を保って同居するなんとも不思議な作品。でもこれ、すごく病みつきになります。
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2008-03-02 19:13:28
Sylvain Chauveau / Nuage [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Sylvain Chauveau / Nuage (Type) ('07)
2000年にデビューし、以後DSAやFatCatのサブレーベルである130701等から作品をリリースしてきたフランス人作曲家Sylvain Chauveau。本作は2007年にTypeからリリースされた作品で、フランス人映画監督Sebastien Betbederの2本の作品『Nuage』、『Le Mains D'Andrea』の為に書き起こされた短編サウンド・トラック集である。同じく2007年にTypeからリリースされた前作『S.』は、ピアノと電子音によるミニマリスティックな作風だったが、本作では彼の得意とするピアノとストリングスによる静謐な作風へと回帰している。どこか物憂げに一つ一つ慎重に言葉を発するように奏でられるピアノの音色と、暖かなチェロ、ヴィオラの響きが、映画の1シーンを目の前に映し出す・・・それほどまでに想像力が掻き立てられる作品。ポスト・クラシカルな美しいサウンドと、最小構成の楽器による音の「間」が堪能できる。ぼやけていながらも、強烈な象徴性を放つジャケット・デザインも素晴らしい。
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2008-02-03 23:39:56
Tim Hecker / Atlas [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Tim Hecker / Atlas (Audraglint Recordings) ('07)
'07年締めくくりのレヴューがTim Heckerでしたが、'08年最初のレヴューもTim Heckerです。昨年末に出たライブ盤『Norberg』と同時期にアメリカはポートランドのレーベルAudraglintから500枚限定でリリースされたヴァイナル・オンリーの10"シングル。'06年に作曲された本作にはA・B両面に10分程のトラックが1曲ずつ収録されており、それぞれ"Atlas One"、"Atlas Two"と題されています。"Atlas One"は大地を揺るがす巨大な砂嵐のごとく分厚いホワイト・ノイズが渦巻く中、その中に穏やかなクリーン・トーンのギター・サウンドが蜃気楼の様に微かに揺らめいており、相反する性質の音が見事に共存しています。それに対し"Atlas Two"では冷たく澄んだ美しいレイヤー・サウンドと、それに寄り添うように爪弾かれるアコースティック・ギターの音色が心地良く響き、静的なトラックに仕上がっています。シングルとは言え、このハイ・クォリティーぶりには十分にお腹いっぱいにさせられます。
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2007-12-02 14:20:46
Tim Hecker / Norberg [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Tim Hecker / Norberg (Room40) ('07)
カナダのサウンド・アーティストTim Heckerのライブ・レコーディングがオーストラリアのレーベルRoom40からリリース。ライブ音源のリリースは'04年のSTAALPLAATの『Mort Aux Vaches』シリーズ以来。'05年夏にスウェーデンのNorberg鉱坑で収録された本作では、彼の持ち味であるノイジーかつ瞑想的なレイヤー・サウンドが鉱坑内の岩石と呼応・反響し合い、まさに自然と一体となって放たれている。煌くメロディーがガラス玉のように転がる導入部から、高密度のプラズマが吹き荒れるようにノイズがなだれ込み、そして温かみのある伸びやかなシンセがノイズと絡み合うという、彼の音楽の魅力が見事にこの一枚に凝縮されている。近年はFenneszやIsis、Jesuなどのロック勢とライブ共演を果たしていますが、(いつものセリフ)是非来日も果たしてほしいものです。1曲約20分収録。
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2007-11-11 18:20:28
Oren Ambarchi / In The Pendulum's Embrace [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]


Oren Ambarchi / In The Pendulum's Embrace (Touch / Southern Lord) ('07)
オーストラリアはシドニー出身のギタリスト、音楽家であるOren Ambarchiの最新作。UK盤は馴染みのTouchから、US盤はSouthern Lordからのリリースとなっている(彼は近年Sunn O)))のツアー・メンバーという関係から)。低音の効いた緩やかなギター・ドローンのループを基調に、微かに飾り程度のピアノ、(ドラム)パーカッション、ベル等の音色を重ね、ミニマルな曲調に仄かな色彩が加えられ、心地良い温度を感じさせる。最終曲ではアコースティック・ギターのフリーな爪弾き、全てを包み込むようなベルの金属音と微かな歌声が瞑想の世界へと聴き手を誘う。ラストに向けてアコギのボリュームが上がりドラマティックに終わるのかと思いきや、突如ブツっと音が切れてしまう(自分だけでしょうか?)。全3曲約40分収録と若干短めだが、十分に聴(効)かせてくれる作品。彼の作品に触れるのはこれが初めてなのだが、前作も素晴らしい出来だそうで、そちらもチェックしようと思う。
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2007-09-30 18:27:24
KTL / 2 [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

KTL / 2 (Editions Mego, Thrill Jockey) ('07)
現在Pelicanとのスプリット・ツアーで来日行脚中のKTL=Peter Rehberg&Stephen O'malley(Sunn O))))。私は残念ながらライブを観に行けなかったので、気晴らしにレヴューします。
さて、タイトルからもわかるように彼らの第二作です。今回はCDは前回同様Editions Mego、そしてヴァイナルはThrill Jockeyからのリリースです。アルバム構成は、轟音けたたましいトラックをアンビエントなプロローグとエピローグで挟み込んだ、という前作のフォーマットを引き継いでいるのですが、轟音は前作よりも控えめで、どちらかというと静謐でより"聴かせる"作品となっています。恐らくPitaのドローンとStephenのギターコラージュによる#1。地獄への扉をノックするような低く重苦しい音が延々と続く中、煌びやかともいえる高音階のループが頂点へと登りつめる#2。深いディストーション・ギターが渦巻く阿鼻叫喚の#3。ラストのクリーントーンのギターが白眉である#4と、実に聴きごたえのある70分。二人がただのウルサイ音を出すだけの凡庸なミュージシャンではないことを証明しています。
そんな注目度120%の来日公演、是非観たかったものです・・・。会場では来日ツアー限定のCD-R『Eine Eiserne Faust In Einem Samthandschuh』(Ltd. 300!!!)も販売されたそうで、羨ましい限りです(誰か私に売ってくれる人いませんかぁ?)。また、12inch限定の『3』がORから発売されるとのことで(会場でも売られていたのでしょうか?)、こちらも非常に楽しみです。
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2007-09-23 23:35:11
V.A. / Good Night: Music To Sleep By [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

V.A. / Good Night: Music To Sleep By (Tigerbeat6) ('03)
Kid606が主宰するTigerbeat6からリリースされた"眠りのための"アンビエント・コレクション。このコンセプチュアルな2枚組の作品にはKid606を始めとする名うてのアンビエント〜音響界隈の音楽家たちが参加しており、眠りへと誘う静寂のサウンドを奏でています。ちなみにジャケットはたくさんの小さな"z"の文字で構成されています。
disc 1の冒頭を飾るのはKid606。一定の周期でうねりを繰り返す低音と微弱なグリッチ音の#1、重厚な低音がディレイ・リズムを刻む#2、明確なリズムを伴ったファニーな音満載の#3と、普段の暴れん坊サウンドとは一味違った側面を見せてくれます。続いてはStephan Mathieu。短波ラジオのような#4、澄み渡る冬の青空のような#5、エレピが優しくループする子守歌の#6と三種三様の質の高い楽曲を提供しています。Kurt Ralske提供のスペーシーな#7を挟み、Tigerbeat6からのリリースも多いElectric Companyは様々な音のループが次々に重なり合い"時"を感じさせる#8、金属系の打楽器のような音が特徴的な#9と、他のアーティストとは違い、リズムによるアンビエント・サウンドを展開しています。
disc 2はPimmonから始まります。どことなく動物たちの発する音を連想させる#1、雄大な大河の流れようなシンセの#2、明るくメロディックな#3と、随所にその独特の音使いを散りばめています。続いて#4はTim Heckerによる大曲。濃い霧のような低音サウンドに人の声がこだまし、やがて細かく振動を続けるメロディックな旋律から砂嵐・・・、そしてまたこだまする人の声が現れるといった構成。コンピレーション提供曲とはいえ、ハイ・クォリティーな作品です。MainのSF的な大曲の#5に続き、ラスト#6はOren Ambarchiによるとどめの大曲です。Eの音が無常の響きを延々と繰り返す中、ズッシリとしたドローンがそれに同調し、最後には後光まで差してきそうなほど神々しく美しいサウンドにより昇天させられます。
また、本作にはそれぞれのディスクにKurt Ralskeによる短編の映像作品も収められており、文句無しの非常に完成度の高いコンピレーション作品に仕上がっています。しかし現在廃盤状態につき、中古店等で見つけたら即買い間違い無しです。
2007-09-16 19:12:07
Frank Bretschneider / Rhythm [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Frank Bretschneider / Rhythm (raster-noton) ('07)
過去にMille Plateaux、Raster-Noton、12k等から数々の作品を世に送り出してきたKometことFrank Bretschneiderの新作です。今作のタイトルはズバリ「リズム」ということで、全編に渡ってこれでもか!というほど彼流の「リズム」が体験できる作品になっています。ストイックなまでに研ぎ澄まされ、また一段と低音のフックが効いたリズムにより、本来それそのものでは無機質なはずのパルス・トーンが非常に野性味溢れるものへと変貌を遂げています。シームレスに次々と展開される構成も一種の昂揚感を煽りたてます。また、要所要所にパルス以外の音がサンプリングされているあたりもサウンドが短調になっていないポイントでしょう。まさに知性と野生のぶつかり合い。過去の作品とはまた趣の違った、彼の新しい代表作の一つであることは間違いありません。
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そんな傑作を引っさげて、また彼とその愉快な仲間たちが来日します。
raster-noton japan tour 2007

10.23 TUE 「raster-noton.sunsui」 大阪
10.24 WED 「raster-noton.metro」 京都
10.26 FRI 「raster-noton.unit」 東京
Frank Bretschneider以外にもCarsten Nicorai、Olaf Bender、さらにこの三人によるユニットSignalの演奏もあるようです。2005年の来日時はBretschneider抜きのSignalだったので、今回の完全体でのライブは楽しみです。
2007-09-02 19:17:08
Lusine Icl / Language Barrier [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Lusine icl / Language Barrier (Hymen) ('07)
Jeff McIlwainによるLusine Iclでの新作。複数の名義で好調に作品を世に送り出している彼ですが、この名義では'02年の『Iron City』以来となるリリースです。注目の今作は、なんとほぼリズムレスのアンビエント作。確かに今までのフロア向けの作品の中でも数曲アンビエントに傾倒したトラックがありましたが、全編アンビエントというのは初の試みであります。ジャケットも然ることながら音の方も涼しげで、透明感のあるレイヤード・アンビエンスにフィールド・レコーディングを交え、メロディックな仕上がりとなっています。フロア向け、リスニング向けの両面で聴き手をここまで魅了する様は、Kettelと相通ずるものがあると思います。(彼も全編アンビエント作品を作ってますね。)
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2007-08-05 23:10:43
Alvin Lucier / Bird and Person Dyning [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Alvin Lucier / Bird and Person Dyning (Cramps) ('76)
作曲家にして作家でもあり、ヴィジュアル・アーティストとしての側面を持つアメリカ、ニューハンプシャー生まれの現代音楽家、Alvin Lucier。現在はWesleyan大学で教鞭を執っている彼ですが、今日までに数々の実験的な音楽とパフォーマンスを繰り広げてきました。そんなLucierの1976年発表の初期作品がこちらです。本作はイタリアのプログレ、アヴァンギャルド・レーベル、Crampsの"Nova Musicha"シリーズ第11作で、A、B両面に1曲ずつ収録されています(CD化もされています)。まずは"The Duke of York"と題されたA面。おもむろに語りだすLucier・・・語り終え唐突にアカペラで歌いだしたかと思うと、段々とその歌声が歪に変化しだします。発声によって生じる空気の振動にあわせブルブルと低音が唸ったり、エフェクトがかかった声が船酔いを引き起こすような揺れを生み出し、シンセがそれに同調します。最後のほうはもはや声だか何だかわからなくなっています。人間の声の新たな側面に焦点を当てた曲、というところでしょうか。次は作品表題曲のB面。両曲ともCD付属のライナーがイタリア語で書かれているため、曲の内容が詳しくわからないのですが、一定のパターンで繰り返しピーピピピと鳴く電子音の鳥の声が高音のフィードバックを引き起こし、徐々に変化していく曲。ライナーには、Lucierが謎の機械を持って鳥の声を発している装置と相対している写真が収められていますが、Lucierと電子音鳥の装置との位置関係により、共鳴の仕方が変化するという仕組みみたいです。2003年の来日時にこの作品を演じたときも、Lucierが装置近づいたり離れたりして、鳥の声を変調させるパフォーマンスを行ったそうです。聴いていて気持ちいいような悪いような、何とも不思議な作品(でもクセになります)。また是非来日して彼の実験精神をこの耳と目で体験させて欲しいものです。
2007-05-01 12:50:08
Alva Noto / Xerrox Vol.1 [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Alva Noto / Xerrox Vol.1 (raster-noton) ('07)
Alva NotoことCarsten Nicolaiの新作。間に坂本龍一とのコラボや企画物の『For』リリースはあったものの、'05年の『Transall』シリーズ以来の本格始動となる一発目がこの作品。今回も全5作に渡るシリーズものだそうで、テーマはタイトルにもあるように【Xerrox = Xerox;コピー、複製、再現】。オリジナルとコピーの関係性や、コピーのプロセスに着眼点を置き、コピーがオリジナルへと変化する現象を捕えた作品。作品中には空港、飛行機の機内プログラム、電話の保留音、ホテルやコンビニ等の音がサンプリングされており、それを彼自らがデザインした"Xerrox Sample Transfomer"なる機材で加工処理、再構築しています。今までの彼の代名詞でもあったリズミカルなサイン・ウェイヴの使用は今作ではほとんどなされず、流麗に響き渡るデジタルノイズによるノンビートのアンビエント・サウンドに仕上がっています。毎度おなじみの無機質なCDパッケージのイメージからは想像できないほど壮大で雰囲気ある内容で驚きました。今後のシリーズ続編にも期待。
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2007-04-20 21:23:04
Fennesz + Sakamoto / Cendre [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Fennesz + Sakamoto / Cendre (Touch / Commmons) ('07)
Christian Fenneszと坂本龍一のコラボ。二年前の初コラボ作『Sala Santa Cecilia』は、両者ともにラップトップを用いたライブ音源だったのですが、今作はFenneszは前回同様エレクトロニクスおよびギター、坂本はピアノでの共演となっています。聴く前から大体中身は想像がついていたのですが、Fenneszのギターを材料にしたのびやかなアンビエント・サウンドと、もはや坂本節ともいえるピアノの音色が春の朧げな陽気にぴったりです。また、Fenneszのエッジのきいたギター・サウンドはほとんど聴かれず、いつになく控えめで、聴き易さの点で言えば、普段こういう音楽を聴かない人にも受けそうな感じです。Carsten Nicolaiと坂本のコラボともつい比較したくなりますが、両者が互いに音楽ファイルをやりとりして作品が出来上がったという点では同じです。ただ、Notoとの共演はミニマルでストイックな印象があったのに対し、こちらはより自由度が高く、リラックス効果のあるサウンドに仕上がっているような気がします。コラボもいいのですが、Fenneszの'04年の『Venice』以来のソロ作を早く聴きたいものです。
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2007-03-11 20:09:55
The Hafler Trio / Masturbatorium [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

The Hafler Trio / Masturbatorium (Touch) ('91)
イギリスにおける音響アーティストの先駆者であり、膨大なリリース量でも知られるThe Hafler Trioの91年発表の1曲入りEP。Touchからのリリース。今でこそAndrew McKenzieのソロであるが、もともとは名前の通り三人組で、オリジナルメンバーはMckenzieの他に元Cabaret VoltaireのChris Watsonと、Dr. Edward Moolenbeek(後に二人によって創りだされた架空の人物だということがわかった)がいた。また、Zbigniew Karkowski等の音響アーティストも一時期参加していたり(Karkowskiは本作にも参加。)、ミュージシャンとのコラボも数多い。Merzbowこと秋田昌美の著『ノイズ・ウォー:NOISE WAR』(青弓社)によると、彼等のバック・ボーンである音楽探求機関ROBOLやその創立者である音響学者:Robert Spridgeon博士のこと、博士が開発に携わった音響兵器のことなども書かれており、非常に興味深いのだが、長くなるのでここでは割愛します。簡単に言えば、Hafler Trioは単なるインダストリアル・シーン上がりのユニットではなく、音の正確な活用や音が人体へ及ぼす影響(悪影響も含め)を念頭に置いた活動を展開する、音の研究者としての側面を持ったアーティストといえる。
前置きが長くなってしまいました。この作品はグループとしての活動が最も充実していた絶頂期のものであり、Annie Sprinkle(元売春婦、元ポルノスターであり、パフォーマンス・アート等を通じて、アートとセクシュアリティーを結びつける活動を長きに渡って続けている女性、らしい。)をフィーチャーした作品で、裏ジャケには彼女の下着付きの局部がどアップで写っている。インナーには何やら長々と文章が書かれているが、おそらく何か学術的なことでしょう。本作には約17分のトラックが1つ収録されていて、前半は深海に響き渡る潜水艦のソナー音の様な音が冷たく柔らかく響いているのだが、途中低音のドローンと鋭い耳触りのノイズが鳴り出すと、どこかSFチックな雰囲気になってくる。中盤、ドローンが前面に押し出され、微粒の雑音と人の声のような音がこだましているところに突如重く攻撃的なシーケンス・リズムが出現する。その絶妙さはさすがインダストリアル上がりだなという感じでとてもカッコイイ。徐々にリズムが速度を上げ、周りのノイズも音量を増し頂点へ達した瞬間空へ放り出されて終了。良くできた作品です。
2007-02-11 20:16:40
Coil / The Ape of Naples [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Coil / The Ape of Naples (Threshold House) ('05)
1982年の誕生以来、UK、ヨーロッパの地下電子実験音楽界の最前線であり続けたCoil。音楽活動の過程で様々なメンバーが流動的に出入りすることがよくありましたが、根幹を成すのはグループの創立者でありヴォーカルを担当するJhonn Balanceと、Throbbing Gristle、Psychic TVのメンバーであったサウンド・クリエイターのPeter Christophersonの二人。グループの最盛期であり、多くの名盤を作り上げた80年代以降、二人は地道に音楽活動をし続けていたのですが、2004年にJhonnが不慮の事故で亡くなってしまい、PeterはCoilとしての活動を止めることを余儀なくされました。そしてこのThe Ape of Naplesが彼らの実質上最後のオリジナル・アルバムであり、Jhonnへの追悼の意が込められた作品になっています。作品は1985年から2005年の間の音源を編集したもので、ニューオリンズにあるTrent ReznorのNothing Studioでレコーディングされました(Coilは過去にNINのリミックスを手がけ、PeterはNINのビデオ・クリップを何本か録ったこともあり、NINとは密接な関係にありました)。中にはJhonnが死の数日前に録音したトラックもあるようです。全体に漂う温かくメロディックなサウンドと全身に突き刺さるようなJhonnの悲痛な声が、Coil独特の世界観を創り上げていて、編集盤とはいえ一つの作品として聴き込める作品です。中でも所々で聴くことができるマリンバの音が幽玄に響き渡り、作品を瞑想的なものにしています。また、最終曲のGoing Upは1970年から85年までイギリスのBBCで放映されたコメディー・ドラマ"Are You Being Served?"のテーマソングのカバーで、Coilのラストライブで演奏された音源を編集したものであります。伸びやかな女性ヴォーカルがあたかもJhonnへ捧げるレクイエムのように聴こえます。この先Coilの新しい音は聴くことはできませんが、Peterの次のアクションに期待しましょう。
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2007-01-21 21:47:40
Taylor Deupree / 1am [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]
去年一番最後に聴いた作品です。

Taylor Deupree / 1am (12k) ('06)
12kのオーナー、Taylor Deupreeの新作。本作は1トラック21分収録のEPで、500枚限定発売なんだとか。前作『Northern』では、彼の新居のあるニューヨーク郊外の冬景色を静謐な音でもって見事再現していたのですが、今作はある夏の日の午前一時に彼の自宅付近の森に暮らす虫達の声を捕え、それを基に制作されたものとのこと。なるほど、夏の夜の虫達のオーケストラというべき心地良い騒がしさに、途中ポツポツとグロッケンシュピールやベル等の硬質で透き通った音色が加わり、比較的ノイジーな、しかしそれでいて耳障りでない作りになっています。曲中特に何の抑揚もなく、最初から最後まで平坦に曲は進んでいくのですが、1週間で作り上げられたということもあり、いつもの繊細な作風とは違った、彼の大胆な一面が垣間見れる作品です。コンパクトな作品だけに、今後の愛聴盤になりそうな一枚。
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2007-01-14 21:33:30
Richard Chartier / Incidence [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]
去年のMY BESTに選ばれていながら、昨年中に紹介できなかった作品をば。

Richard Chartier / Incidence (raster-noton) ('06)
昨秋、12kの一員として来日を果たしたRichard Chartier。自身も12k傘下のLINEを主宰しているのだが、この度新作をraster-notonからリリースしました。64分1曲のみ収録の本作のコンセプトは "終わりのない楽曲の中の果てしない空間" 。無音状態でスピーカーのボリュームを最大まで上げたときに聴こえる様なスーッといった音、灰色を想起させるドローン、どこからともなく現れるザラついたノイズ・・・始まりから終わりまでの間、これらの超微細な音群が一つの大きなうねりとなって現れては消え、浮かんでは沈んでゆくことによって、静寂というものを意識的に実感できる究極のアンビエント作品です。あまりのストイックなアンビエントぶりに、聴いている途中でどこか異空間にでも放り出されたかのような感覚を覚えてしまいました。音数は決して多くはないが、64分間で様々な表情を見せるあたりはChartierならではの醍醐味です。ちなみに写真にもあるように、本作は引き出し式の長方形パッケージで、作品に相応しいデザインになっています。
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2006-12-29 23:44:39
Hecker / Recordings for Rephlex [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Hecker / Recordings for Rephlex (Rephlex) ('06)
ウィーンのレーベルmegoの看板的存在であるHeckerの新作は、タイトルにもあるようになんとRichard D. JamesのレーベルRephlexからのリリースです。RephlexといえばAFXを始めとして、Luke Vibert、Squarepusher、Cylob、DMX Krewなど、テクノ、アシッド〜IDMというイメージが大きいのですが、そこに「音響派」のHeckerが入り込んでくるあたりが、このレーベルの懐の深さといえるでしょう。とはいえ、Rephlexからリリースすることになった経緯を知りたいものです。肝心の音ですが、本作には'02〜'04年の間にクセナキス・スタジオで製作されたトラックが集められており、レーベル・カラーのことなどお構いなしにHecker節が大炸裂しております。パッと聴き以前の作品よりアナログな音の比重が増えたかなぁという感じですが、ひきつけを起こして何重にもねじれた強烈なエラー音が高音圧で迫り、それが時にはノイジーに、時にはファニーに、様々な表情を見せてくれます。また、ライナーノーツには曲ごとに解説が載っていて、彼の音に対する知識の豊富さを物語るように、物理の方面の専門的なことがチラホラ書かれています。この人の頭の中は一体どうなっているのか、一度見てみたいものです。
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2006-12-17 23:06:48
KTL / KTL [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

KTL / KTL (Editions Mego) ('06)
さて、極悪盤のお出ましです。Editions Mego(新生Mego)から1stアルバムをリリースしたこのKTLなるアーティスト。実は、Editions MegoのオーナーのPitaことPeter Rehbergと、スラッジ、ドゥーム界を背負って立つSunn 0)))のStephen O'malleyのユニットなんです。かたや『音響派』なる現象の中心でコンピュータによる電子ノイズを奏でる者と、かたやBlack Sabbathの血を脈々と受け継ぎ、地を這うような暗黒のギター・サウンドを奏でる者と、両者の音楽形態こそ異なれど、結ばれるべくして結ばれた夢のコラボ・・失礼、悪夢のコラボ。作品のオープニングは20分を越すアンビエント・サウンドから始まるのですが、この二人にしてはえらく抑えてるなと思っていたら大間違い。続いて、熱波の様にしつこく纏わりつく超重低音と硬質で刺激的な電子ノイズ雨あられ。しかし、両者がただやりたい放題に鳴らしているのではなく、メリハリを効かせ、作品を質の高いものに仕上げています。同タイトルの4つの暗黒組曲の後は、再びアンビエント・トラックでフィニッシュ。両者の音楽的な幅、柔軟な対応力が最大限に発揮された力作です。聴いて8回うなされろっ!
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2006-11-05 20:58:28
Tim Hecker / Harmony in Ultraviolet [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Tim Hecker / Harmony in Ultraviolet (kranky) ('06)
私がこよなく愛するTim Heckerの『Mirages』以来2年ぶりの新作。なんとkrankyからのリリースです。オーロラの様に幻想的に揺らめくアンビエント・サウンドと、メタリックに輝く七色のノイズのハーモニーは、Tim Heckerの得意とするところ。ダークな印象であった前作と比べると、生楽器のコラージュは少し影を潜め、分厚いノイズ・サウンドが作品をより一層壮大なものにしています。また、おぼろげな表情を見せるメランコリックな旋律は、ジャケットの古ぼけた写真のように、どこか懐かしく郷愁の念を想い起こさせます。耳を澄ますとところどころにフィールド・レコーディング的な音を聴くことができますが、一聴しただけでは認識できないほど巧みにコラージュし、周りの音に完全に溶け込ませているあたりは、さすがです。中盤に控えるノイズ控えめの流麗な4曲から成る組曲から、次のノイズ・トラックへ移る瞬間は鳥肌もの。ラストにはオープニング・トラックと同じフレーズが用意されており、作品全体の構成も凝ったものになっています。この作品と共にシームレスに流れる時間を堪能する・・・最高ですね。
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2006-10-08 21:37:06
Boris with Merzbow / Sun Baked Snow Cave [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Boris with Merzbow / Sun Baked Snow Cave (Hydra Head / Double H Noise Industries) ('05)
日本を代表するヘヴィーロック・バンドBorisと、ノイズの帝王Merzbowのコラボレート作品。ISISのAaron Turner主宰のHydra Head、そのサブレーベルDouble H Noise Industriesからのリリース。Borisを聴いたのはこの作品が初めて。Borisはロック色の強い作品は大文字表記の"BORIS"で、アンビエント、ストーナー、ドゥーム色の強い作品は小文字表記の"boris"で、作風によって名義を分けてリリースしているみたいなのですが、1曲62分のこの作品はやはり後者の"boris"表記になっています。ちなみに両者のコラボは本作で三度目。ポツり、ポツりと爪弾くアコースティック・ギターのマイナー・コードが執念深く繰り返され、生々しい静寂を生み出す導入部。そこに徐々にMerzbow色が加わっていくのですが、いつもより控えめで、数枚フィルターを通したようなノイズです。同時に地響きのような轟音ディストーションが深層をゆっくりと流れ始めます。まるで嵐の夜のようなサウンドの中、遠くから微かに聴こえてくるレクイエム・・・。その嵐が過ぎ去るころ、今度はクリーン・トーンのギターが導入部と相対するようなメジャー・コードを聴かせてくれます。そして、蝋燭のが溶けきり灯火が消えるように、闇の中へ落ちていく・・・。聴いてみて意外だったのは、実験色はさほど強くなく、むしろメロディックで構成もとてもしっかりといているという点。しかも割りと聴きやすい。良作です。Boris、他の作品も聴かねばなりませんな。
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2006-10-01 23:54:57
Hecker / Sun Pandämonium [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Hecker / Sun Pandämonium (mego) ('03)
テクノイズの申し子、Florian Heckerのmegoからの2作目フル。眩いばかりの電子ノイズが縦横無尽に動き回る。20分オーバーの2曲目、雑音蟲とでも言うべき電子音飛行体が鳴きながら四方八方を動き回り、強い重力に引きつけられたような粘っこい低音が重々しく地を這う。そして辿り着く先には・・・。大曲の後、ラストまで1、2分の小曲が6曲用意されているが、この人はいつも変わった曲の配置の仕方を好むなぁと思う。話は逸れるが、この様な音楽でもやはり作品全体の構成を考えて作っているのだろうか? 考えているとして、例えばどの様な方法で曲を配置するのだろうか・・・。後半の小曲達では前半の洪水のような曲に対して、空間を意識した電子音の奇妙な戯れを聴くことができる。現在、30歳を少し越えたばかりのHeckerだが、この名作をmegoに残して、今後どの様な展開を見せてくれるのか、期待せずにはいられない注目の人物である。
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2006-09-24 20:46:38
Pimmon / Secret Sleeping Birds [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Pimmon / Secret Sleeping Birds (SIRR.ecords) ('02)
ポルトガルのエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル、SIRRから'02年に発売されたPaul GoughによるPimmonの傑作。リリース後廃盤になってしまったものの、'05年に再プレスされた(しかし、また品切れの模様・・・)。以前の実験的要素は若干影を潜め、幾分とっつき易くなった印象を受ける。ジャケットの可愛らしい小鳥の絵の様な・・・とまでは言わないが、独特の音色がファニーに、ときに不安げにループする。グニャリと歪んだ空間をグリッチ・ノイズを纏ったおぼろげなメロディーが交差する万華鏡サウンド。作品前半はその奇妙なサウンドが耳を捕えて離さないが、後半になるにつれて一点に集約され、昇華するサウンドは見事である。
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2006-09-11 20:26:11
Pita / Get Out [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]


Pita / Get Out (Mego) ('99)
今年からEditions Megoとして再スタートを切ったウィーンの電子音楽レーベルMego。その主宰者であるPitaことPeter Rehbergのデビュー作であり、パルス・ミュージックの金字塔でもある『Seven Tons for Free』に続く2ndアルバム。本作は98年から99年にかけて、ウィーン、パリ、オックスフォード、アムステルダム、東京、NYでのライブ音源を編集したもの。冒頭から鼓膜を襲う高周波ノイズの嵐は、"パルス"を基とした実験的な作風だった前作を経て、今作での本領発揮ぶりを予感させる。電子音の無邪気に戯れるがままの、比較的コンパクトなトラックが大半を占める中、11分オーバーの良い意味で"異質"なトラックが3曲目に用意されている。今までの彼の曲には似つかわしくない、はっきりとしたメロディーが流れ、まるでギタリストがディストーションのエフェクターを踏むが如く、突然ノイズがそのメロディーを飲み込んでしまう。しかし、決してメロディーがノイズにかき消されてしまうのではなく、一体となって大洋のうねりの様に力強く響き、ひたすら荘厳である。作品のハイライトでもあり、この曲が作品全体の求心力を生み出していることは間違いない。ちなみに本作のジャケットは赤と青の二種類がある。
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2006-09-03 20:28:06
Richard Chartier + Taylor Deupree / Specification.Fifteen [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Richard Chartier + Taylor Deupree / Specification.Fifteen (LINE) ('06)
LINEからAlva Notoに続きRichard Chartier(LINE主宰)とTaylor Deupree(12k主宰)のコラボレート作品の登場です。『SPEC.』 以来7年ぶりのコラボである本作は、写真家の杉本博司氏のSeascapesシリーズの作品にインスパイアされたもので、今年3月にワシントンでの杉本氏の回顧展の際に行われたライブ公演を収録したもの。1曲45分のサウンドスケープは潮が徐々に満ち引きする様にゆっくりと幕を開け、Seascapesのテーマである、「見かけ上は均一の外見をしている下で起きている、わずかな変化とヴァリエーション」という言葉同様、ゆらり揺らめく限りなく無音に近いループが徐々に螺旋を描いていきます。そして水平線の彼方に消え行く本作は、まさにSeascapesと一体化しています。杉本氏の回顧展は去年森美術館でも開催されていたようで、次回開催されるならば是非見に行きたいと思います。願わくばライブ付きで。
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2006-08-06 22:27:51
Komet / Rausch [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Komet / Rausch (12k) ('00)
KometことFrank Bretschneiderの12kからリリースされた作品。全11曲収録ですが、一定のテンポ(BPM=120くらい)で最初から最後まで切れ目無くノンストップで進行していき、また、前の曲の構造を受け継いで次の曲に移っていくので、変奏曲や組曲に聴こえなくもないです。水や氷の粒が日光を反射して一瞬だけ煌くようなサウンド、または、真っ暗な空間で点滅を繰り返す小さな光のようなサウンドとでも言いましょうか、点と線だけで作られたようなミニマルな作品です。規則的に配置された点と線の合間を縫って、控えめなノイズがたまに顔を出すなどの小技も効いています。ちなみに、タイトルの"rausch"とはドイツ語で【酔い、酩酊、陶酔、熱狂】という意味らしいのですが、どちらかと言えばひんやりと落ち着いているこの作品における、"rausch"とは一体どういうことなのでしょうか。何やら奥が深そうです。Raster-Noton、Mille Plateaux、12kなど、様々なレーベルから何枚もの作品をリリースしている彼ですが、この作品はかなりの傑作の部類に入るでしょう。なのに1000枚しかプレスされておらず、廃盤状態。即急の再プレスを望みます。
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2006-07-30 20:36:35
Pan American / For Waiting, For Chasing [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Pan American / For Waiting, For Chasing (Mosz) ('06)
LabradfordのMark Nelsonのソロ名義であるPan Americanの二年ぶりになる5枚目の作品は、古巣のkrankyからではなく、RadianのStefan Nemethが主宰するオーストリアのレーベルMoszからのリリース。去年末の来日公演が記憶に新しい彼の新作は、シンセやコンピューターなどのエレクトロニクスと、ギターやフリューゲルホルン、チベタン・ベルなどの生楽器が織り成すアンビエント作品になっています。前作『Quiet City』に続き、フリューゲルホルンにDave Max Crawford、ドラム、パーカッションにSteven Hessが参加しており、今作でのこの二人の演奏はさらに重要な位置を占めています。また、本作にはなんと制作中に彼の妻Kindonに宿った子の胎動の音を録音したものが取り入れられています。彼の音楽スタイルは作品を重ねるごとにより実験性を増し、よりディープな世界を演出しているのだが、不思議と体にスッと入り込んでくるような温かみのあるナチュラルな音楽性も持ち合わせており、それが彼の最大の魅力なのではないかと思います。
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2006-07-23 19:58:30
Alva Noto / For [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Alva Noto / For (LINE) ('06)
Carsten NicolaiのAlva Noto名義での新作は12kの姉妹レーベルであるLINEからのリリース。本作には1999年から2005年の間に制作された楽曲が集められており、それぞれのトラックが彼が影響、インスイレーションを受けた人物、または参加したプロジェクトのために作られたものです。一曲目から一人ずつ挙げると、ノーベル文学賞受賞作家 Elfriede Jelinek、オランダのアーティスト Suchan Kinoshita、シカゴのラップトップ・トリオ TV Pow、前衛マルチメディア芸術家 Peter Roehr、セサミストリートのアーニー&バート(マジっすか)、葛飾北斎、2年前に事故死したインダストリアルの重鎮CoilのJhonn Balance、写真家 Jeff Wall、そしてJohn Cageという面々。全曲に渡って言えるのは、彼の献呈の想いが込められているのか、奇抜な音はほとんど無く、落ち着きのある静的なミニマル・アンビエントであるということ。特に後半、for Jhonn Balanceからの三曲は素晴らしいです。最後のfor John Cageのトラックでのピアノが物憂げで何とも言えません(これは教授が弾いてたりするのか?)。
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2006-05-21 23:54:21
Taylor Deupree / Northern [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]
またTaylor Deupreeです。

Taylor Deupree / Northern (12k) ('06)
2004年にSPEKKから『January』をリリースした後はコラボ作が目立ったTaylor Deupreeですが、久々の12kからのソロ作品リリースです。レーベルの作品紹介にもあるように、本作はTaylorがブルックリンから自然豊かなニューヨーク郊外へ活動拠点を移し、そこの冬景色にインスパイアされてできた作品だそうだ。アコースティックギター、ピアノ、ピアニカなどの生楽器やフィールド・レコーディングが随所に使われていて、冬の情景をより想起しやすいナチュラルで温かみのあるサウンドに仕上がっている。中でもtr.2の後半に後ろの方で微かに聴くことができるフィールド・レコーディングらしき音や、tr.3のザラついた音の波と笛の様な音の対比なんかにはゾクゾクっとする。しかしまぁ、この種の音楽は「冬」をテーマにしたものが(特にTaylorは)多いなぁと思うのだがどうしてだろうか。逆に冬という季節はとても音響的であるとも考えられる。そうすると自然界の音こそ我々の聴覚をくすぐる魅力に満ちているのではないのか、なんて思う。この作品はそんな魅力を凝縮したようであり、個人的に北国の故郷を自然と思い出してしまい、とても親しみを感じるのだ。なお、タワーレコードで本作を買ったときに冬景色のポストカードが何枚か付いてきた。
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2006-05-12 23:15:28
Taylor Deupree / Stil. [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Taylor Deupree / Stil. (12k) ('02, '06)
Taylor Deupreeの12kからのソロ3作目。しばらくの間廃盤で入手困難だったが、今回500枚限定で再発された。前作の『Occur』が"非反復"をテーマに掲げていたのに対し、本作はしっかり反復していて、アンビエント作品としてもなかなか聴きごたえのあるものになっている。長尺の曲が4曲収録されており、薄く引き延ばされた穏やかなトーンのループが控えめなグリッチノイズと共に徐々にに変化していく。tr.1"Snow/Sand"はタイトルの通り二つの部分から構成されていると思われ、注意して聴くと一つのテーマから次のテーマにに移りまた元に戻っていくのがわかる。また、今作は日本人写真家の杉本博司の撮った『海景』の写真にインスパイアされて作られたそうだ。
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2006-04-09 23:03:23
Radian / Rec. Extern [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]

Radian / Rec. Extern (Thrill Jockey) ('02)
ウイーンのエレクトロ・アコースティック・トリオであるRadianの3作目。彼らは本作以前にウイーンのRhiz、megoからそれぞれ一作ずつリリースしているが、それらの作品がJohn McEntireに気に入られ、本作では彼がレコーディングとミックスを手がけ、Thrill Jockeyからのリリースとなっている。私がRadianに出会ったのは2004年のFenneszらとのライブのことで、メンバーのMartin Brandlmayrが叩くシャープで奇妙なドラミングが非常に心地良かったのを今でも覚えているのだが、本作でもそれを堪能することができる。ドラム、パーカッションのリズムを軸に生々しいベース音が加わり、グリッチ・ノイズが絶妙の間合いで前に出たり退いたりするサウンドは唯一無二。一部の曲を除いて緊張感のあるゆったりとした曲が多いが、それぞれの音とアンサンブルがとても刺激的なので飽きることがない。次は本作以前の作品を是非聴いてみたい。
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2006-04-01 23:36:10
Tim Hecker / My Love Is Rotten to The Core [ ■円盤紹介 Ambient, Experimental ]
しばらく更新が滞ってしまいました。
引越して早々にネットが開通し、水を得た魚のように生き生きと更新しております。

Tim Hecker / My Love Is Rotten to The Core (Substractif) ('02)
Tim Heckerの名作『Haunt Me, Haunt Me Do It Again』に続きリリースされた5曲入りEP。前作の青空の如く澄んだサウンドとは対照的にノイジーな音を聴かせてくれる。というのも、このEPはあのVan Halenのギター・サウンド、ライブの歓声などを彼流に分解し再構築したもの。エッジの効いたディストーション・サウンドが彼特有のコラージュ・テクニックにより新たな姿へと変化している。この作品は穏やかな作風の1stと近年の多少ノイジーな作風との橋渡し的な存在であり、彼の試行錯誤の様子や、あふれる実験精神を窺い知ることができる。
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